少女には向かない職業

 

少女には向かない職業 (創元推理文庫)

少女には向かない職業 (創元推理文庫)

 

 

これはどうやらパソコンドラマ化?したようですね。最終話で賛否両論のようですが。

題名はP.D.ジェイムズの「女には向かない職業」(ハヤカワ文庫)よりでしょう。

 

葵も静香も13歳、法律上は無罪です。ただ、この舞台上の狭い島で、きっと彼女達は受け入れられないので、きっとどこぞへ行ってしまうでしょうね。しかも冷静に考えれば、葵の父の件は人を殺したっていうところにまでは行っているのかどうなのか。微妙なところではあります。ラストだって静香が死に掛けてるから過剰防衛にだってなれます。でもそういうことじゃない。

つまりこの物語は殺人罪に値するかどうかなどに焦点はないわけですね。

最初は島の生活から。あれ、なんか島を村に変えたらひぐらしく声が聞こえてきそうですw

でも中学時代、こういう子いたーっていう子ですね。葵は。もちろんそんな家庭的な事情があるかどうかまではわかりませんが、お調子者で、コイツいじっときゃ問題ねぇや、っていう。

で、そんな日常の風景があっさり一転してしまうところ。しかも、葵は最終的に父の際に行った、手鏡をおく、というのもただの悪意で殺意ではない。それでも人は死んでしまうんです。うわぁ。

その後の葵の心情がすごくキました。悪夢としてなかったことにしてしまう。静香と会うのも学校だと自分の方が強くて平気。でもそれから友人関係、男女関係、親子関係、その隙に静香とまた廃墟で会ってしまう。

 

よく考えれば2件目は完全に静香の事件で、葵が手を下す必要性は全く無いですよ。でもなんでしてしまったかって、それは静香の「本物の殺人者がいるんだから」っていうのによる、奇妙な義務感?と優越感?と連帯感からですよね。

なんかわかります。例えば飲み会で「もう限界ー」って思ってるのに、「一気!」ってコールかけられると飲んじゃうアレですよね。(え)

バトルモードと、通常モード。一過性の興奮状態?

命の大切さの問題でもないんです。バトルカードは友人との架け橋だったと考えるにしても、生活の一部として非常に大切な位置を占めていたし、金魚が亡くなったときはお墓を作ってあげる。犬は見捨てる。…かかわりが大事な時期なのかしら。

冷凍マグロで殺さなかった、起こりえたかもしれない<2つ目の殺人>が起こらなかった。その時の葵の気持ちの変化もこれまたよくわかります。あのどきどき感。

どっちにしろ、ふとしたきっかけで転がり落ちてしまうものですね。人の気持ちなんて。

そういえば葵の母の気持ち。恩田陸の「三月は深き紅の淵に」に出てくる台詞(確か)。

「女はね、少女に若さに嫉妬するんじゃない。その子がこれから持つ輝かしい未来に嫉妬するのだ」

 

「大人なんてこわくない」結局それに尽きているのかな、少女の世界は。

でも最後の静香の台詞は、私は悲しいです。

「こっちには、大西葵がいるもん」「誰も、誰も知らなかったけどね。あたしだけ知ってたけどね。あたしの友達は、大西葵は、特別な女の子なんだよ」この文に入ってるキーワード、怖くないですか?私は経験上、開き直る前、心底この少女達の世界が怖かった。グループと、トクベツと、秘密で出来た横のつながりは、本当に恐怖でした。

いじめの温床みたいな言われ方しますが、(掲示板やプロフ、サイト作りも一貫でしょう)自分がどう立ち回っていくかに必死で、自分より下がいないと自分がいじめられる恐怖もあって、ね。 

今考えるとなんでそんなことに汲々としていたかわかりません。学校の世界なんてはっきり言って狭いし、ましてやその頃必死につながりを求めていた相手なんて今や名前すら時の彼方なのに。

 時々教え子の中学生(公立生に多い)が真顔で、「親友と高校は違うけど、同じ大学に入ってマンションシェアするんだ」って言っていたりして、「おいおいあるわけねーだろ」と思いつつ、そんな夢を壊すようなことを告げてきた大人に、「大人はなにもわかってない、自分達の絆は強固だ」と反論したかった当時の自分を思い出して、なんとも言えない気分になるのでした。

もう少し妄想してみると、きっとバトルアックスで殺したことに対して、外の人は、ゲーム脳とバカの一つ覚えのように認識してしまうんでしょう。