夢路の剣

 

姫神さまに願いを 〜夢路の剣〜 (姫神さまに願いをシリーズ) (コバルト文庫)

姫神さまに願いを 〜夢路の剣〜 (姫神さまに願いをシリーズ) (コバルト文庫)

 

 

『玉女』を求めた九郎ちゃん。念願成就への道。九郎の念願は、兄の代わりにすべての業を背負って死ぬこと。

「扇討ちが神への反逆になる」とたとえ知っていたとしても、九郎ちゃんは討った気がする。神に反逆するとか、そういうすべてを引き受けたかったと思う。兄の代わりに。…やだもう可愛い。

あとこの腰越状の意訳に涙が出るほどに笑いました。そ、そですね。

「この九郎のものになりませんか?」九郎のものになる、ということは玉女を得るということ。それは結局、兄の役に立ちたいからで。「やっと、九郎を殺してくださるのですね」

「九郎は、兄上に愛されているわ。今も、昔も、これからも」

義経には、安らかな夢路を。それがせめてもの報酬だと。

 

鞍馬出身であるということは、「お山」の情報網も持つということ。お山、というのは、時の朝廷とは相反するもの。そこのつながりがあるとすれば、本気になれば九郎も弁慶もあっさり逃げれたような。

平家に忠誠を誓う弁慶はそもそも九郎を殺そうとした。「九郎は、おまえという男がいなければなにもできなかったよ」「あなたはいつもそうやって、無防備なまでに私を信頼していた。だから殺せなくなった」「…また随分とユカイな成り行きだな」ちょっと、弁慶、崇徳院に天狗の力をもらいながらなにやってんの。ユカイすぎるわ。

 

苦労したのは弁慶であって、九郎は己の不遇をダシに人に甘やかされてここまできたようです。爆。いやいや九郎ちゃんらしいですね。

「お前、尊い主を万年発情期男のように罵ったな」

「長い髪の女をこっぴどく泣かした経験はない?」「いやー、ありすぎて全然わかりません」「あーほら、おみっちゃんがあきれて帰っちゃったじゃないの」…ときどき思うが、テンにおみっちゃんっていいようにこき使われてないか?

前に、くもんかなんかの伝記漫画の九郎がすっげ美人で、ストーリー的にもガチで判官びいきで、みたいなのに、北の方が男装して平泉までついていったっていうのがあって、ちょっとどうしてくれよう、って思った。おもしろすぎるんだけど。

 

静はただ九郎ちゃんが好きだった。でも愛していたのは「舞」だった。命を賭したいものは九郎ではなかった。それでよかったのだ。奔放さに魅かれたのだから。

そして九郎は静に、戦場でしか能のない、呪いを背負う覚悟のある身でも、未来に命を残せるかと求めた。彼の名は死してなお、永遠の命を授かった。

「自由で奔放な人だから」自由は命はただ、夢に眠る。

 

政子ちゃんがトモと出会ったきっかけは「妹から夢を買ったから」…この伝承、なんなんでしょうか。

「愛のために魔道に堕ちた女」と言いきった政子ちゃんがすごい。そもそもこの時代に愛なんて言葉は…いや、ま、いいか。

政子に己が夢を託して、自分と、自分の子孫が業を背負う。うーん、きついな。

 

懐かしい将門様ー☆もうね、このシリーズの中の将門様大好きですから。

秀衡様…というか奥州藤原氏がそういう血だったとは。なるほどね。でも確かに、蝦夷、という地は、いつでも、今でも、特別だと感じる。ていうか、秀衡様、超格好いい。

 

マナとアラヤになるかと思うと、「夜の露は苦く死ぬ」って書いててもしゃーないですね(え)