荊いだく蝶

 

 

私たちは、いつか、すべて消えてなくなるのに。そう言って嘆くのが蝶姫。消えてなくなる未来をなんとか回避しようとあがくのが信長。と直江。消えてなくなる未来に向けて出来得る限りのことをしようとするのが高耶さん。

「あれはやはり、人ではなく蝶だというのか」「迫りくる終焉を、それを封じるための呪術はないのか。それを知らぬか」

ここまで自分が信長を変えてしまったことに、その終焉を見届けられないことに、「はやくなくなってしまいたい」と思う蝶姫。「駄々をこねているような彼が、心配でたまらない。彼を残して、彼の目の前で逝くことが怖い」と。

…「笑って、逝けるだろうか」の高耶さんを思い出します。

なんだろうね。大事な人だからこそ傍にいてほしいのに、大事すぎて、傍にすらいることができないなんて。

テンもカイにいてほしい。永遠にいることがかなうし、それまで気長にも待てる。でもその時変わっていないだろうか。荊のような永遠を欲する人間。でもそれを手に入れてしまって後悔しないだろうか。

華の園に遊びて、ただ狂え

 

「かわいそう」「兄上など、消えて無くなってしまえばよろしいのに」などと言っている於市さんが最高に乾いていて深く思っていて、さすが信長の妹と思います。

この頃の文章の色気というか匂やかさというか、ものすごく好きです。夢、蝶、っていう言霊が最大限に美しい。

 

サチが雲恵を落とした瞬間の話が読みたいです。さぞかしツンデレな感じであったろうと推測される。