ダリの繭

ダリの繭 (角川文庫)

ダリの繭 (角川文庫)

 

オカアサン。この最初の文を読んだ時思いだしたのは、姑獲鳥の夏。あれもそうだった。男と言うのはどうして、母なる子宮に帰りたいと幼児退行を起こす話を書くのだろうか。

サルヴァトール・ダリ。私はダリの絵は結構好きです。シュールリアリズムが好き。何故か自室にゆがんだ時計のレプリカがぶら下がってます。だまし絵も好き。でもダリの絵は、どこか綺麗でゆがんでいる。

ガラとの関係までどうこうと思わないけど、ホモやらショタやら不倫やらな画家がたくさんいた中で、これはこれでそのエネルギーが違う方向への発散された例なように思えます。だからこそその対象がいなくなって廃人になってしまったのだろうけれど。

 

アリスと火村の新婚ごっこネタはいい感じにアホですね。火村の人殺しへの憧憬を知りつつ、深くは立ち入らない立場に立てるアリスはある意味健全な精神をしていると思います。火村のもろさが浮き彫りに出た時にさりげなく寝床を提供することくらいならしてやれる、そう思ってるんじゃないかな。

火村の犯罪に対する考えもちょっと出てきました。個人的には犯罪というのはひとえに『一般』と自分をくくる大勢が気持ちよく生きていくためのものだと思います。人間が集団(自衛)行動をとらなければ生きていけない弱い生き物であればこそ。

昔は罪をはらって根の国にはやさすら姫に渡して罪を清めていた、と。さすら姫にはそういうところがありますよね。だからこそもどかしい。彼女を大事に思う身にとってのもどかしさが常に付きまといます。