“文学少女”と月花を孕く水妖

 

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)

 

 

今ちまたで(たぶん)有名な“文学少女”シリーズ

絵が素敵なので読もうとは思っていたのですが、シリーズものは最終巻もしくは番外編か外伝から読む癖のある私。出会ったのが特別編でした。(この癖はミラージュで後悔したくせになおってません)

熊本のホテルで眠れない夜に読んだことを思い出します。1人、旅先、夏、雰囲気はばっちりでした。

 

最初に光圀さんが怒ってたのは「白雪」との約束が続いていた=いまだに脅迫されていることが許せない、といったところでしょうか。麻貴先輩が言うように“手を下した”犯罪については認められなかったおじいさん。

でも要するに光圀さんはゆりさんの息子としてドイツで生まれ育ち、その時の恩人の孫は「犬」扱いにしても世話してやっている(というより恩人ではなくお目付け役だとしたら憎かったのかな)。姫倉一族の血統の犠牲者のくせに、犠牲者だからか?血統にこだわる。ゆりさんへのマザコンのせいなのか、麻貴さんへの感情も複雑に。

しかしゆりさんの息子だとわかってたら、目を傷つけたりはしなかっただろうな、白雪も。

最終的に麻貴さんはアルマダの海戦を生きのびたのだ。(共に生きる相手は高見沢さんかと思っていたら、ドレイクやウォルシンガムではなく選んだ相手はサー・ウォルター・ローリーですか…)

 

泉鏡花。もしかしたら邪宗門に似ているのかもしれない。でもあれは雰囲気がそういう時じゃないとなあ。お邪宗な気分じゃないと浸れない。小説も料理と同じくタイミングとか環境とかが大事です。

 

―あなたは、私を知りますまい。

忘れません。

 

遠子先輩のことを知らなかった日々だったかもしれないけれど、忘れない出会いも確かにあるのだと。

 

どうでもいいですが長いこと月花ってお月さま(女性のね)の隠語だと思ってました。そんなことなかったっていうよりどっから来たんだその勘違い。

麻貴先輩は借りをかえすとか言って青●に走り(これは遠子先輩に気づいていたのか…;)後年まさかのご結婚。姫倉の祖父の弱みを握った彼女は自由に生きたんだね。

でも一応おじいさんも気づいて欲しかったんじゃないか、とか。単に麻貴先輩にやっかい払いをさせたかったのかもしれないけど。弱みを作るもんじゃないですね。

そして一番の被害者は間違いなく秋良さん。一冊の本が狂わせた人生ですよこれは。