キッチン

 

キッチン (角川文庫)

キッチン (角川文庫)

 

 

私はこの「キッチン」という小説が大好きでした。今もそうです。

吉本ばななに出会った最初の小説がこれでよかったと思います。

「満月」の方が今は好みかな。「女は強い、カツ丼食いな」というテーマがすき。

でもそう考えると、宗太郎のような明るさ?を求めていることになる。私には一番好きで愛しているキャラクターが亡くなった経験しかないからよくわからないけれど、そういうときに、つまり人生を生きるエネルギーがないときには辛いと思う。想像でしかないけど。

もちろん血族が亡くなった経験はあるけど両親姉妹従兄弟は健在。遠くにいた祖父母が病気で亡くなったという直後に、こんな悲しみはなかったと思う。色々ごたごたしていたのもあるけど。亡くなって1年くらいたって、不意に思い出して泣けてきたのは1回だけあるけど、前を見過ぎて私には過去を悼むことが出来ないような気がしている。過去を振り返っては駄目だという強迫観念がある。何か悲しいことを、自分の精神が疲労するようなことになりそうで。

何を中二病なことを。私の経験などどうでもいいのでした。

 

ムーンライト・シャドウもそうだけれど、一貫して「大切な人を亡くした人の再生」というのがあって、そういう小説を集めたのかなあと思うと同時に、結局生きていくしかないのかという諦観じゃなくて、生きていこうというのがあれば、それでいいのかしらと思います。

 

「キッチン」では、私は妙にハマった言葉があります。「使い込まれた」。

素敵な台所にある、使い込まれたもろもろという風景が素敵だと思うのですが、成長したからかしらん。

 

キッチンが映画化しているということで、確かに映像化したら美しいだろうなあと思う。静けさがあればそれでいい。しかしえりこさんが橋爪功だと?ちょw見たいじゃないか。

ふたりのナイト・ダイヴかあ。

 

江国かおりと似た空気感があるけれど、吉本ばななの人たちは性的なことを表だしにしないから、好きです。

柊もすごい男だよなあ、とは思う。あれは高校生だから許される範疇なんだと思います。大学生でやったら名物になるかしらん。

「私はもうここにはいられない。仕方がない。私は行きます」っていうの。そう言えるのは、素敵で、私はまだだけど、いつか言えるといいと思いました。「あの幼い私の面影だけが、いつもあなたのそばにいることを、切に祈る」。