万聖節にさす光

 

万聖節にさす光 英国妖異譚14 (講談社X文庫ホワイトハート)
 

 

最後にシモンさんは、「あー終わったー。ユウリとのんびりした生活が戻ってきたー」としみじみおじさんのようなことを言っていますが、むしろ始まってるからな!まだなーんにも終わってないからな!!

シモンはユウリという魂に魅かれてしまって、本当に道を綺麗に踏み外していると思います。彼はベルジュのトップなのだということを周囲の人間が教えてあげて下さい。(と今欧州で歯がゆい感じになっているシモンに向けて。個人的にはアシュレイファンなので別にいいのですが、シモンがフ抜けてしまうのもそれはそれでいやなのです)

まあいいか、あとがきでアシュレイは「どついたろか」と言われているくらいだし、作者様もシモンが好きって言ってることだし。作者様がシモンが大好きで、でも結局アシュレイに翻弄されている(まさしくユウリ)というのが好みです。

本当にセント・ラファエロというのは、彼らを「大人びた子供」でいさせてくれたんだなあというのが最近になってしみじみわかります。

その枠から飛び出たアシュレイでさえ、彼らと会う時はそうでした。

 

シモンからユウリの独占欲は丸出しなんですが、気付かないんですかねシモンさん。

まーしかし、セイヤーズの気持ちはよくわかりますとも!!ええそうです。

一つ上にちょっと気になる先輩がいて、自分と同じくらいしか関わりがないのに、自分より可愛がられている友達がいたらむかつきますよね普通は!

そのあたりがセイヤーズの可愛さです。もちろん彼はちょっとユウリのことが苦手なんでしょうが、嫌われたいわけでもぎくしゃくしたいわけでもないんです。恋ですよ!

私も同性3人でそういう感じだったのでよくわかります。別に先輩にはらぶらぶな恋人がいますけどそういう性的な意味じゃなくてね、一種のパワーゲーム感覚でしょうか。全員大好きなんですけど。

 

そういえば受験生でしたね彼らは。

忘れていました。皆しれっとしているのだから。

だいたいあの試験をそんな「天才だから」と同じくらいの勢いで「シモンだから」なんて言おうものなら、真面目に勉強している人たちに刺されますよ。

個人的には、「西洋の中の東洋」として確固たる地位を築くユウリ、というのをしっかり本人が理解して進もうとしているのにかなり感動しました。私も「男性に交じって働く女性」として、女性であることが有利に働くところに行きたい気持ちはないわけではない、というかむしろかなりあるし。

 

あとモルガーナさん大活躍。いっそシモンから輝ける一族とか言う名を奪ったらどうですか。

 

アシュレイは今回も大活躍でした。が、今回は少し趣向が違うという、ね。

アシュレイは本当にヒューのことが好きだったというか、ヒューのこととなるとちょっと普段は使わないような心持が働くんですね。

ま、相手はもう輪廻の環に入っちまったのでどーしょーもないですが。

それはそれとして、青春の淡い一ページになっているといいと思います。

「もうちょいだな」とつぶやいたのは…何がもうちょいなんですか?英国が終わってもさっぱりぽんです。

ハーンからの攻撃は、ユウリを通して具現化していたということで、ユウリが認識していなければ全くもってこの世に出てくることすらできないってことならまだわかるんですけど…。そのあたりの仕組みを教えてアシュレイさん。

でもそうなったらノイローゼになった若枝さんたちにも見えてた理由がつかないし。うん?

あと「半分死人」という情報は…あれか、日本にいた時にすでにわかってたのか。あいつマジ怖い。

 

キレたシモンさん。嘘をついたユウリにも、つかせた自分にも腹が立っているんでしょうけど、それを大人げなく出さないあたり本当に成長しましたねー。

そしてユウリと見つめあって「われら一心同体生きる時は違っても死ぬ時は一緒」みたいなノリになってます。

最後に一心不乱に祈るところ。ユウリにはきっとなんでもない勢いで出来ることでも、頭脳派にはきっとすんごく難しいことなんでしょうね。「己の矮小さを知れ」と。そして祈れ、と。アシュレイみたいなこと言うんですねw

でもその中で、「ユウリの声は、きれいだった」というのが、シモンの、一種の悟りの状態なのかもしれないなあって思いました。彼の神性が、いつでも解放出来るようにするためには、もっともっと、悟らなきゃいけないと思うし、そうなったら彼は、ユウリに代わってセイヴァーになれたかもしれない。

 

最後、お疲れ様でした。ヒュー・アダムス。彼の死からこの物語が始まったとは言え、本当にすげえ人生歩んだもんだ。

「さよならだ、ユウリ」ってのは、魂のさすらい人を自称していた彼が、本当にさすらうのかと一瞬恐怖しましたね。還ってくる場所、ユウリとの想い出。それを得たから、もう怖いもんなんてないのかと思った。

それにしてもシモンとユウリと、あともしかしたらアシュレイも。それだけの人間に愛されたヒューが、ちゃんと魂の輪廻に入れてよかったです。