麦の海に沈む果実

いま読むと辻村深月と同じくらい中二病のかおりがするぜ!

三月シリーズの一部、という位置づけがつよくて、たぶん最初は恩田陸も(もちろん黒と茶含め)そういうシリーズにするつもりだったと思うのですけど、最終的にはたぶん飽きたんだなーwと思ってます。
記憶をなくした理瀬という、2月の終わりにやってきた訪問者。
釧路湿原でそんな王国があるとかなかなかにファンタジー

じゃあ黎二、お願いね。

黎二は麗子のことを友人(男のね)のように思ってたとしたら、理瀬のことをどう思ってたかも正直分からない。たぶん黎二は理瀬のことは「気になってしょうがない」友人レベルだったと思うのですけど、それが恋の始まりではないと誰が言えようか。
最後に黎二が「絶命した」って書いてなくて、微笑んでるように見えたから、その後たとえ憂理が泣いてて「やっぱりあの二人は死んだんだ」って理瀬が思ったとしたって、お葬式とかそういう話題がなくって、だから昔、黎二が死んだかどうかなんてわかってないんじゃないかって思ってました。
実際麗子がそうだったし。
だけど最後に黎二がずっと持ってたコサージュを少しずつ飛ばして行って、「さよなら、黎二」って思えたなら、黎二というのは理瀬の心の中にある、「麦の海に沈んでいた」時代の象徴で、「時の花びらを散らす」ことによって、不可侵になって、そして理瀬の中では確かに死んだんだということかなって思ってました。
そんなことつらつら思ってたのに、黄昏で結局黎二死んでるってさらっと記載があって、こんちくしょー!と思ったのは私だけですか。

黎二が理瀬の兄だったら、黎二の「複雑な家庭環境」とか、「墓場組」ってのも半分あたって半分違うのかなあ。
黎二は理瀬のパートナーとしては間違いなくふさわしくないので、あそこでちゃんと死ねてよかったと思う。ヨハンと違って、最終的に理瀬がいらだつ未来が眼に見えるw
憂理が最終的に麗子とのあれこれから抜け出せなくて、そして黒と茶で蒔生なんぞ(利枝子もか)に振り回されて死ぬってのが、割と許せなかったけど、まあ今にして見ると、憂理も若いね!そしてその未来も暗示されてるような性格だね!
お茶の幻覚だったわけだけど、最後に謎解きしてくれるとか、まじで今の恩田陸を考えると恩田陸優しいねってなる。

そして私は聖のファンでした。黎二の言うとおり、一番正常なのって実は聖でないかというの。正しく養成されていってほしい。聖が黄昏みたいな理瀬と関わり持つのは悲しいし、それは理瀬もそう思ってたんじゃないかなあ。だから最後はもう聖と関わりもたなくなったし。
「私は黎二兄さんのほうが」っていう三月思いだしますね。兄さんってなんだよ…と思ってたが、もしかしてこれは普通に理瀬の兄って意味でそう呼んでたのか?

ところで久しぶりに読み返してみたら、三月の方って普通に黎二と理瀬いきのこってんだな!