革命前夜

須賀さんのドイツもので「革命前夜」とか題名が書いてあったら、軍人モノだと思うよね。
まさかの音楽モノだったwびっくりした自分にびっくりですよ。思いこみって怖いね。

音楽者と言えばフジミですけど、ヴァイオリンよりピアノのほうが好きです。
ヴェンツェルの伴奏は振り回されてこその日本人ですよ。ハンガリーはそういう国ではなかったけど。
しかしこれほんとにヴェンツェルとクリスタなかなかの人たちだった。クリスタはどんどんシュウと出会って西に行ってお馬鹿さんになってしまったけど、あのハンガリーの鉄条網を超えて自由になる彼女も彼女でこれからの人生があるのだなあと思うと。
ゾフィーが西だってそんなに生きいい場所じゃないと言ったように。それでも私の祖国に残ってくれて嬉しかったというように。

東京大空襲では本当にすべてが焼け野原になった写真がたくさんあるけど、たまにそれは関東大震災と頭の中で間違うことがある。あれもこれも、ほぼ同じに見える。人為的か作為的かそうではないか。それだけの違い。それはいったいなにが違うのだろうか。住み家を喪った人には一緒ではないか。
ただ東京は「大事な」都市って思われたから爆撃されたようにドレスデンは思えなかったなら、恨みだけがつのるのかもしれない。
ナウシカじゃないけど、木が燃えて土になって再生するほうがはるかに自然だ。
しかしDDRってダンスダンスレボリューションしか思い出せなかった。

共産圏の閉塞感をドレスデンで表すあたり須賀さんも相当だけど。それと音楽を交えることも。
いやすごく須賀さんらしいなあとは思いました。
イェンツの「ドイツ人ってのはいっつもそうさ。生真面目で野蛮、いっつもやりすぎて自滅」っていう評がなんかかわいい。ヘタリアか。そしてイェンツはそのドイツ人らしさで自滅したというか、自分の視野をどんどん狭めて行く人だった。

そしてラスト。革命前夜。わが親愛なる戦友たちへ捧ぐ、としたヴェンツェル。この音楽の才能。この愛情。
…ヴェンツェルがゲイってことが微塵も生かされない話ではあった。

 

革命前夜 (文春文庫)

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